今年最後のオペラはロッシーニ

あさって25日(土)は歌劇「湖上の美人」に出演します。

 

東京上野の奏楽堂での、かっぱ橋歌劇団さん主催のオペラ全曲上演(セミステージ形式/衣装・演技・照明・小道具付き、小編成オケ&ピアノ伴奏)が目の前となりました。昨日で予定していた全てリハーサルが終了し、あとはゲネプロを残すのみ。本番に向けてもちろん不安は尽きませんが、今年最後のオペラ出演をロッシーニ作品で締め括れる幸運と喜びを胸に頑張りたいと思います。

 

 

自分の演じるジャコモ5世(1512〜1542年)は実在の人物で、スコットランド王として1歳で即位してほぼ人生の全てを王様として過ごしながらも、30歳の若さで病没しています。オペラの原作「湖上の美人」(ウォルター・スコット著)はもちろんファンタジーに満ちたあらすじですが、その中ではジャコモ王が在位中の中世スコットランドの「騎士道精神」が随所に現れ、ロッシーニの作品中でも際立ってロマンティックなものと言われます。(なおオペラの中では、ジャコモ5時は”ウベルト”という偽名を使って登場し、身分違いの若き美女エレナに恋心を抱く一人の青年として活躍します。オペラの最後には王の姿を明かす所も含めて、昔のTV時代劇「暴れん坊将軍」で松平健演じる徳川吉宗公が”徳田新之助=しんさん”の偽名で市井を歩き回ったのと同じですね!)

 

 

ぶ厚い楽譜と睨めっこの日々もあとわずか。ナポリ時代のロッシーニ作品に共通する”超絶技巧”のオンパレードですが(細かい音符の羅列によるアジリタ唱法、非常に長いブレスコントロール、変奏のセンスなど多くの歌唱技術の要素が求められます。テノールの難所とされる高音についても、”ハイC”と呼ばれる高いドが11回、その上のド♯が5回、その上のレが2回…!)、歌で聴かせるページと同じくらいレチタティーヴォと呼ばれる”語り”のようなページも登場人物の性格を表す上で重要なので(今回は普段ならカットするようなレチタティーヴォの箇所もほぼ全て演奏します。慣習でカットされる部分はCDやYouTubeも含め、参考になる過去の音源が全くありませんでした!笑)、そのどちらの要素もロッシーニの様式を大切にしながら丁寧に歌い演じたいと思います。

 

 

滅多にお目に(お耳に?)かかれない作品の貴重な上演機会は25日(土)の昼夜2回公演だけ!私は16時半からの夜公演に出演ですが、ダブルキャストのお昼の公演も併せて、皆様どうぞ奏楽堂にロッシーニを聴きにおいで下さい。

 

 

 

(※写真はチラシ表裏と、ウォルター・スコットの原作と今回使用しているリコルディ改訂版の楽譜。)