初日が無事終演!

新国立劇場公演「愛の妙薬」の初日が終わりました!

 

 

間違いなくここ数年で最も緊張してしまい、前日はなかなか寝付けませんでしたが、夜公演(17:30頃に楽屋入りでした!)ということが幸いして、イタリアのSiestaさながら「お昼寝」してから本番に臨みました。ちなみに明日からの残り3公演は全て14:00開演なので夜にしっかり眠れるといいのですが…(苦笑)

 

 

メイクして衣装を着ると開演15分前ほどになり、軽く声出しをしたらいそいそと舞台袖へスタンバイ。ネモリーノ役は冒頭から最後まで舞台にいる時間が長いため、休憩を除くと本番中はほとんど楽屋に留まることがありません。歌う量も多いので(テノールの役としては例外的に多い役柄の一つでしょうか)、自分がこの役を歌う時はウォーミングアップはほどほどにして、舞台で歌いながら調子を上げつつ最後までスタミナを維持出来るようペース配分を心がけています。特にこの作品では時にコミカルな演技面でもかなりエネルギーを必要とするので心身のコントロールが大切です。とは言え、冒頭がいきなりアリアなので(!)、声が寝たままでも具合が悪く、その辺の”さじ加減”はやはり経験で補うしかなさそうですね。

 

 

昨日の初日公演では幸いなことに大きなミスやトラブルもなく、最後まで集中してネモリーノ役を演じきることが出来ました。上演中は温かい拍手を何度ももらうことができ、その度にジーンとしつつも(笑)また次の音楽が始まると役に没頭していく作業が続きました。興奮と冷静さが同時に体の中にいるのが手に取るように分かる、そんなスリリングな一夜となりました!

 

 

新国立劇場の本公演デビューとなったこの日の終演直後の感想は自分でも意外なことに、「あと3回やれる!」という未来志向(笑)なものでした。本番前の方が少し感傷的な気持ちもありましたが(学生時代の歌の先生にもご覧頂きたかったのですが、ご高齢とご体調の面から叶いませんでした)、カーテンコールの後で共演者やスタッフの方々と喜びを分かち合ったあとすぐに、いつの間にか上述のペース配分のことや初日の舞台のダメ出しをもらいたくなる心境になっていました。欧米のオペラ文化のように一つのプロダクションで何度も上演回数があることは日本ではなかなか難しいのですが(それゆえに一回きりの本番が一生の思い出になったりもするのですが)、きっと彼ら外国のオペラ歌手たちはこんな感覚で舞台を重ねていってるのかもなぁ、良い意味で100点満点を狙いすぎずリラックスしてその日その日の舞台を楽しめているのかもなぁ、などと思いながら、あらためて新国立劇場公演ならではのオペラ歌手としての喜びをかみしめて帰宅しました。

 

 

「愛の妙薬」公演は一日おきで続きますので、限られた休息日はしっかり体を休めてまた次の公演に備えたいと思います。新国立劇場のTwitterやFacebookなどでは本番の舞台写真がたくさん閲覧出来ますのでそちらもどうぞお楽しみ下さい。明日からも引き続き皆様のご来場をお待ちしています!

 

 

 

(※写真は全て昨日撮影。  左上:当日の有料パンフレット。出演者のデータや演出プラン、作品の解説はもとより、作曲家の詳細や作品の時代背景など本格的な読み物としても大変価値の高い資料となっています。  右上:劇場内の関係者通用口。「本日初日」が眩しい!  左下:地下鉄の最寄駅から劇場に着くまでの通路に掲示された、現在上演中もしくは近く上演予定の新国立劇場のラインアップ。オペラ公演以外もバレエや演劇なども充実しています。  右下:同じく通路に掲示されていた、6月に日生劇場で上演&出演予定の「セビリアの理髪師」のポスター。本来は2020年に上演予定だったのがコロナ禍で2年延期になりました。今年の上半期は偶然かつ幸運にも、自分のレパートリーの中の”二大演目”を大きなカンパニーで出演させてもらえる最高のスケジュールとなっていて、「さてはオペラ歌手人生のピーク(=あとは下るだけ)が来たな…」と勝手に喜びと儚さを楽しんでいます。)