モーツァルトの大作「イドメネオ」に挑む

今週土曜日は大阪いずみホールで歌劇「イドメネオ」の演奏会形式上演に出演です。

 

モーツァルトの有名作品である「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「女は皆こうしたもの」「魔笛」に比べて決してメジャーとは言えませんが、海外では特に近年頻繁に取り上げられ、上演機会も増えています。一般の聴衆以上に歌手や音楽家、オペラ関係者などにコアなファンも多く、”玄人好み”の作品とも言えるかもしれませんね。

 

 

上記の有名作品群とは分野の違う、「オペラ・セリア」とよばれるギリシャ神話を題材としたシリアスなストーリーですが登場人物には悪役が存在せず、怒りや復讐心を持つ役でもそれぞれに同情の余地がある性格を備えています。その代わりに、作品中で象徴的に登場する「海神ネプチューン(=ポセイドン)」はほとんど歌わない役柄ながらも、ストーリー上の悲劇のすべての根源としてとても印象に残ります。

 

 

海で船が難破したため溺れ死にかけたイドメネオ王は海神ネプチューンと、命を助けるかわりにイドメネオが陸に上がって最初に出会った人間を生贄として差し出す事を契約し、その出会った者が偶然にも息子のイダマンテ王子だったことから絶望的な苦しみを抱えてしまう……さらにイダマンテ王子を取り巻く二人の女性の恋愛感情のもつれも入り混じり、登場人物全員が悩み苦しむという、いかにも「オペラ」らしいストーリ構成となっています。

 

 

自分が今回歌う、イドメネオ王の腹心アルバーチェもまた、王の右腕として助言や進言をしつつ、神々に対して祖国のためには、そして王と王子の命を救うために自らの命を捧げようとする自己犠牲の精神を持つ高貴な人物です。アジリタを含む感動的なアリアも与えられていて歌いがいがありますね!

 

 

 

明日からのリハーサルが本当に楽しみです。素晴らしい共演者の方々、指揮者、オーケストラと合唱の皆さまと、このモーツァルトの大作に挑んでいきたいと思います。

 

 

(※写真はイタリア・ボローニャの「ネプチューンの噴水」。ヨーロッパ文化は古代ギリシャ神話の影響も大きいですね。アポロ、ジュピター、ヘラクレス……多神教なのは八百万(やおよろず)の神を崇めた日本の古代と似てるかもしれません。)