モルモット役 in ケージ(籠)

さ都内某大学で行われた、声の専門的研究の実験に参加しました!

 

 

西洋の伝統芸能のオペラ歌手と日本の伝統芸能の能楽師の声の響き方を分析調査しつつ、人間の「声の質感」を解き明かす学術研究の実験で、響きを測定するための特製のケージ(金属製の球体の枠組み)の中で歌わせてもらいました。壁と天井に防音効果が徹底された全く響きの無い特別な部屋の中にそのケージが設置されており、球体のケージの中にはあらゆる角度から小さな集音マイクがスタンバイした歌手に向けられていました。その一つ一つのマイクが拾った響きの周波数を計測して、「オペラ歌手や能楽師の声が、いったいどの方向に、どのように響いているのか」「それがどのような質感を有し、なぜ聴く人の感性に訴えることが出来るのか」などを調査、研究されているのだそうです。”質感”という言葉も含め、文字や言葉で表しきれないものがある分野(芸術、演奏技法など)に住む者としてはとても興味深いテーマでした。

 

 

オペラ歌手はソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バスの男女4種類の歌手がサンプル採取の”モルモット”(笑)として参加し、普段の話す時の声はもちろん、母音での歌唱や音域の高低、音量の強弱など、あらかじめ設定されたいくつかの実験項目をそれぞれ遂行していきました。普段よく歌うアリアの一節や簡単な童謡も歌ったのですが、能との比較のために今回初めて、少しだけ能の曲(「紅葉狩」冒頭部分)も歌わせてもらいました。

 

 

さらになんと、実際に能の面(オモテ)を顔に装着した状態でも各種実験(母音唱やアリアなどの歌唱)を行い、思わぬところで本物の能の面を着けるという大変貴重な経験をさせて頂きました!面はイメージしていたよりもうんと重さがあって(歌っているとだんだんズリ落ちて来そうでした)、目や鼻の部分に開けられた穴はとても小さかったですね。この視野の狭さで、能楽師さんたちは普段どうやって演技しているのでしょう??先日のジョン・ケージ作品での共演に続き、短い期間に二度も能とのコラボとなったおかげで色んな興味が湧いて来ました。

 

 

オペラも能も、マイクの無い時代の声の芸術ということで共通点が多いと言われます。電気の力に頼らず、劇場や屋外など広い空間で多数の聴衆に向けて発語しながら舞台表現を届けるためには、やはりそれなりの専門的な”発声技術”が必要なのでしょうね。歌のレッスンで「頭に響かせるように〜」とか「声を回して〜」「マスケラ(顔面の共鳴)を意識して〜」などなど、指導者がよく使う抽象的な言い回しや伝えるイメージにも、この研究によって科学的な論拠が伴うことになるのかもしれません!

 

 

後日研究の結果がお伝え頂けるとのことなので、楽しみに待っていたいと思います。自分の声を分析されるのはどこが照れくさいというか恥ずかしさもありましたが、とても有意義な時間でした。研究グループの皆様ありがとうございました!

 

 

 

(※写真上:ケージの中で実験中の様子。赤くラインで書いたのが外枠の形状です。防音仕様の壁も特徴的。  下:能の面を装着。素人が気軽に触れてよい物ではないだろうと思ってとても緊張しました。それにしても、こうして見ると普段着姿ではあまりに滑稽ですね!笑)