朗読の本番を終えて

宗次ホールでの「兵士の物語」が終わり、セリフの練習の日々も終了です。

 

 

公演のあった23日は東京オリンピックの開会式当日でしたが、祝日の午後ということもあってたくさんのお客様が宗次ホールに来てくれました。コロナ禍以来、本当に久しぶりの満席に近い客席の舞台からの景色は懐かしく、やっぱり嬉しいものですね!ドイツから来日出演されたヴァイオリンの西村尚也さんも含めた、名フィル首席奏者さんたちのハイレベルなストラヴィンスキーの演奏を楽しみに来場されたお客さんが多かったと思います。

 

 

朗読として出演するのは初めてでしたが、終わってからまた挑戦したくなる気持ちが湧くほど、自分に新しい境地を開かせてくれた素晴らしい機会となりました!今回の公演には監修や演出家がいなかったため不安もあった一方で、自分で自由に取り組むことで自発的な想像力や表現力を引き出す楽しさもだんだん出て来て(落語をたくさん見て参考にしました)、自主稽古の中で色んな声の使い方や間の取り方(歌やオペラと違って、セリフは時間的に”完全に自由”ですね。)などを探求するのはワクワクする時間にもなっていました。

 

 

悪魔や女性も含む11の役柄を声色を変えながら演じ分けるので当初は喉への負担を心配していましたが、本番数日前からの連日のリハーサルも特に問題無く消化でき、終演の翌日もいつも通り歌の練習が出来てホッとしました。(なお本番ではアンコールに同じストラヴィンスキー作曲の「プルチネッラ」という作品から一曲歌わせて頂きました。)普段の歌やオペラではしないようなデフォルメ(大袈裟な誇張)された声の使い方は、特に”二枚目役の多い”テノール歌手としては貴重な経験になったと思います!(笑)

 

 

本番中はお客さんのリアクションが肌で感じられ(宗次ホールならではの距離感のおかげでもあります!)、この作品のシニカルで悪魔的な本質やテーマ(特に音楽を伴う部分は演奏の緊迫感や迫力が雄弁に語ってくれています。)も伝わりつつ、時折り現れる喜劇的なパートでは笑い声もたくさん頂きました。無観客上演や配信コンサート、座席を減らした公演などが強いられるこのご時世ですが、やっぱり演奏家はたくさんのお客さんから刺激を受けながらパフォーマンス出来ることが、より良い音楽や表現の披露に大切な環境なんだなぁと改めて感じました。

 

 

出演の依頼を頂いた主催の宗次ホールさん、共演の名フィルメンバーの皆さん(コンサート前半の「マ・メール・ロワ(ラヴェル作曲)」も本当に素晴らしい演奏でした!)に心から感謝します。そして今年が没後50周年となる、20世紀音楽の巨人・ストラヴィンスキーの作品に取り組めたことに心から幸せを感じています。また朗読やりたいな〜!!

 

 

(※写真上:本番の様子と終演後の記念撮影。長年にわたって応援して下さる宗次徳二オーナーも一緒に。 写真下左:当日のパンフレット。 写真下中央と右:「兵士の物語」の楽譜とセリフ部分。音楽は近現代音楽特有の変拍子と複雑な調性の連続で、セリフのリズムやタイミングには細かく指定があるため正確な譜読みに苦労しました!)