高校生たちの歌声に囲まれて

10日(日)は京都で合唱指導者講習会の講師をしてきました。

 

220名の府内の高校生合唱部員を対象に、午前中はボイストレーニング、午後は曲を使っての丸一日かけた講習会でした。この人数、この所用時間での合唱指導は初めての経験でしたが、生徒さんたちの真剣な表情と豊かな歌声のおかげで終始手応えのある、充実感に溢れた体験となりました。

 

 

発声技術や曲の解釈など、”芸術”を他人に言葉で伝えることは自分にとって本当に難しい作業です。そもそも自分自身がどちらかというと”理解する”ことより”感じる”ことでそういった事を身に付けるタイプなので、例えばボイストレーニングにおいても発声技術を不特定多数(ましてや200人以上の未成年の男子と女子を同時にです!)の人に伝える時にはものすごく緊張しますし、やりづらさを感じます。”声”や”響”という目に見えず数値化もできないものをいかにしてビルドアップしていくかを「言葉で伝える」ことを、これからも時間をかけて研究していきたいと思います。人間の声の可能性、多様性に少しでも若い彼らが興味を持ってくれたら本望ですね。(「マイク、電気が発明されてない時代は、どんな声で屋外での政治家の演説や武将たちの戦の現場での指示などされてたんだろう?」など、他愛の無い雑談もしてきました笑)

 

 

吹奏楽部出身なので合唱部の経験は無いため自分では高校の合唱コンクール出演などはありませんが、留学時代にスカラ座のオペラ研修所で合唱団員養成コースだったことから、ソロとは違うみんなで歌う合唱の楽しさ、声を合わせる喜びは知っています。そのせいか、オペラの時も一人で歌うアリアよりも二重唱や三重唱、アンサンブルの場面の方が好きなのですが、今回のお仕事でより一層、合唱の素晴らしさ、みんなで気持ちを1つにして声を合わせる喜びをあらためて感じさせてもらいました。

 

 

これからもオペラと並行して合唱の世界ともご縁が続いたらいいなと思います。特に若い学生の頃の合唱経験の素晴らしい記憶がいつまでも忘れられずに、年月を経てまたシニア世代になって合唱を楽しむ方々とご一緒するようになってその思いは益々強くなりました。人と人との心の深い部分で繋がることができる、そんな合唱ならではの魅力に私も取り憑かれています。

 

 

(※講習会の様子。ちなみに取り上げた曲はヴァイオリニストの葉加瀬太郎さん作曲の「もうひとつの京都」。数年前に観光PRのために作られたものだそうですが、高校生たちのハイレベルな実演もあって、とても素敵な曲だなと思いました!)