歴史の重みを感じて

藤原歌劇団80周年記念演奏会では、日本のオペラ史における様々なエピソードを聞くことが出来ました。

 

会場となった日比谷公会堂は、1961年(昭和36年)に上野に東京文化会館が出来るまで東京におけるクラシック演奏会のメイン会場でしたが、80年前の1934年(昭和9年)6月7日、まさにこの会場で藤原義江が仲間と共に「ラ・ボエーム」を上演したことで藤原歌劇団がスタートしたそうです(厳密には、当時はまだ藤原歌劇団という名称での上演ではなかったとのこと)。

 

都内にいくつものクラシック専門の音楽ホールが存在する今となっては、この日比谷公会堂で演奏する機会は大変貴重なことだと思いますが(実際、「もしかしたらもう二度と、自分がこの舞台に上がる時は訪れないのかも…..」と思いながら歌いました。)、その外観の独特の佇まいとホール内客席の景色、そしてまさに「時代」を感じさせる音響を少しでも記憶に留めておきたいと思いました。

 

 

演奏会の後、帝国ホテルでご来賓や関係者を招いて盛大なレセプションが開かれました。往年の名バリトン歌手、栗林義信さんのご挨拶のスピーチには歌手のはしくれとして感じ入る所が多く、こうした方々が本当に情熱を持って我が国のオペラ界の先駆者としてご尽力頂いたからこそ今の発展があるのだなと感激しました。

 

 

悪天候にも関わらず、たくさんの「藤原歌劇団ファン」のお客様にご来場頂きました。長年にわたってこうして本当に当団を愛して下さる方々のためにも、そして同じく客席から聴いてくれた若い世代の演奏家や新しいオペラファンのためにも、益々精進して少しでも褒めて頂けるような舞台や演奏を追及していきたいと思いました。

 

(※写真上:日比谷公会堂外観。 写真下:リハーサル風景。藤原歌劇団合唱部とソリスト全員で歌劇「ナブッコ」の合唱のリハ。)