笑顔いっぱいの『トゥーランドット』公演! ②

次は自分の役柄について。写真でお分かりのように、なんと「オカマ(ゲイ)」設定でした!!(笑)

 

 

バリトン一人とテノール二人で編成されるピン、ポン、パンの3大臣の一番上のパートを歌うのがポン(Pong)ですが、スコアにあるように本来の職業は「大膳頭=宮廷料理長」。でも今回の演出家:高岸さんのオリジナル解釈で、本来の肩書はそのままに、それを「宦官」として演じて欲しいとの要求でした。

 

 

宦官=去勢された、又は自ら去勢した役人。

 

 

「去勢によってその分、出世への野心や執着心、金銭欲、排他的思考が鋭敏化され、中性的(オカマちゃん的)な見た目や身振り手振りの滑稽さの中に、その屈折した心の”おぞましさ”のようなものを醸し出してほしい・・・」というのが演出家高岸さんの意図でした。

 

 

 

ペーザロのロッシーニフェスティヴァルでパンツ一丁の役を演じて以降最も演じることに恥ずかしさを感じたのですが……そこはオペラ歌手としてのチャレンジ精神とビジネス(職業)歌手としての演出プランへの適応性を発揮して、自分なりに精一杯頑張ってみました。

 

 

難しかったのが仮面を装着していると目やまゆ毛の表情が使えないため(ほっぺの赤いチークのメイクも隠れがち)、手の動きや足の運びで、軽妙さやオカマちゃんっぽいリアクションを表現してみたのですがなかなか思うようには・・・

 

もちろんオペラなので歌は完全にテノールのまま。間違っても「オネェ」の声色など使わないから、なおさら視覚的なオカマちゃん的表現に苦心しましたね!

 

 

でも最後まで楽しんで出来ました。何より他のお二人とのチームワークも良く、なんでも意見を言い合えたり振り付けの稽古を重ねたりして「運命共同体」としてこの数カ月間のリハーサルで長く時間を共にさせて頂きました。素晴らしいパートナーお二人に本当に感謝しています。

 

 

 

 

高岸さんからのキャラクター設定で、どこか生身の人間離れしたおとぎ話的な他の出演者に比べて、3大臣こそ本来の人間らしい、欲、喜怒哀楽、社会的地位、保身術、、同情の気持ち、後悔、ふるさと……など人としてありふれた要素を体現するキャラクターとして存在してほしいと説明されたときは「これは是非いい役にしたい」とモチベーションが上がりましたね。

 

 

最後の最後、大団円の合唱の中で3大臣は民衆と宮殿をつなぐ階段上で、これまでの圧政からの解放とこれからのこの国の明るい未来を思ってそれぞれ自ら仮面を外します。「もう本心を隠す仮面はいらない、真実の愛を知ったトゥーランドット姫とカラフの純粋な心によって我々自身もこれから生まれ変わるのだ」と宣言するかのように。響き渡るオーケストラと合唱の音色に包まれながら、演じていて本当に感動的な場面でした。

 

 

 

 

 

脇役でもピンポンパンならまた演じてもいいなぁと思っています。あ、でも”オカマちゃん”はコリゴリだなぁ~……(案外似合ってたりして。打ち上げでは合唱の奥様方からお褒めを頂きましたが、なにか??)