共演者さんの紹介④

4人目の紹介はオペラの中の”Theイイ奴”、アレッスィオ役に扮するこの歌手。

勝手に自分のお兄さん的な存在として親しくお話させて頂いている、バリトンの前田進一郎Maeda Shinichiroさんは、前のブログで少しご紹介したとおり沖縄(しかも離島)のご出身。写真をご覧になれば皆様にも”さもありなん”とうなづきたくなるのではと思います(笑)

 

沖縄と言えば、ちょうど1年前のこの頃は、沖縄の浦添市で『魔笛』出演のためにアパート暮らししていたなあと、早くも懐かしさを滲ませながら思い出さずにいられません。オリオンビールがまた飲みたくなりますね!

 

その時も、沖縄県在住もしくは沖縄出身の歌手たちに囲まれて一緒に同じ時間を過ごしましたが、受験生・大学生を含む若手から音大の教員クラスの歌手に至るまで、沖縄の音楽教育・歌手のレヴェルの高さに驚嘆したものです。全国各地で沖縄出身のオペラ歌手が多数ご活躍であることにも妙に納得してしまいました。

 

リハーサルの合間に前田さんから頂いた「雪塩ちんすこう」が大好きです(笑)!!

 

 

 

前田さんの演じるアレッスィオは演出家のお気に入りだそうで、確かに独立したアリアや大きな重唱は与えられていませんが、舞台でのその存在は十分に目を奪われるほどの活躍を求められています。

 

性格もこうした役としては異例なほど生き生きと描かれていて、例えば村の皆を束ねて婚礼の支度をしたり、花嫁のために歌を披露する際は自ら指揮者を務める(おっと、ネタバレ注意……!!)という外交的な面の一方、そっとひとり傷心のリーザにささやきながら気遣いを見せる繊細な優しさを持つ一面や、夜な夜な村に出ると噂の亡霊(実は夢遊病のアミーナ)に心底怯えたり、リーザに対し激しく想いを告げる情熱的な部分なども印象深く、とても魅力的に表現されています。

 

楽譜上で特定はされていませんが、おそらく彼はリーザ(シリーズ第2回に登場)とエルヴィーノが以前は恋人同士だったことも、今もリーザがエルヴィーノを想い続けていることも承知の上で、それでもなお自分の一途な想いをリーザに伝える姿が見る人に同情と好印象を与えてくれています。

 

恋する女性に対して不器用ながらも誠心誠意、求愛の言葉を投げかけ続けても、すげなくあしらわれ拒絶される姿が個人的には『愛の妙薬』のネモリーノや『ドン・ジョヴァンニ』のマゼットのキャラクターと重なって見えることもあり、思わず「頑張れアレッスィオ!」と応援したくなってしまいます。

 

 

オペラは決して主役だけが目立つものではなく、むしろこうした脇を固めるキャラクターやコーラスの一人ひとりの演技の個性があってこその舞台芸術であることを、リハーサルを見ながら改めて再認識するところです。

 

舞台を駆け回る前田さんのアレッスィオに、皆様もどうぞご注目下さいませ!!