共演者さんの紹介②

「夢遊病の女」連続シリーズ、第2回に登場されるのはリーザ役のこの方。

2日組キャストで最もお若い、納富景子Nodomi Keikoさん(※)は九州・長崎のご出身。

 

未だになんとなく都会にコンプレックスを持つ自分としては、稽古に合流して間もない頃の会話で「地方出身なんですよ」という自己紹介を聞いただけで、なんだかホッとして勝手に親近感をもってしまいました(笑)。ちなみに指揮者の園田さんも九州佐賀県ご出身、近日ご登場予定のアレッスィオ役の前田さんは沖縄です。

 

納富さんは在京の大学、そして藤原歌劇団で研鑽を積まれたのでもちろん東京での生活も長いそうですが、今はこのオペラのために近くのマンスリーマンションから稽古場に通われています(園田さん、光岡さん、中井と同じマンスリー組!)。

 

 

 

さてリーザという登場人物についてですが、決して単なる脇役などではなく、主役のアミーナのライバルというか、そもそもエルヴィーノの”元カノ”という設定ということでストーリーの本筋にも関わりを持つ、オペラの常道でもある「三角関係」の一角を担う重要な人物です。(ちなみに「夢遊病の女」では伯爵も加わっての”四角関係”でもあるのです。あら珍し!)

 

またストーリーのキーパーソンとしても重要です。リーザは村の旅籠の女将ですが、ロドルフォ伯爵が宿泊するために提供した部屋で伯爵とロマンスに落ちる寸での所に、夢遊病状態で入ってきたアミーナに憤怒してリーザは自分のショール(台本ではハンカチ)を落としてその場を立ち去り、アミーナの許婚のエルヴィーノを呼んでそのまま伯爵の部屋で眠っている彼女の不貞の現場を見せつけるのですが、「ハンカチ」「密告」「野心」そして「敗北」などのキーワードが頭をよぎることから、個人的な感想として、どこかシェークスピアの(そしてROSSINIとVERDIの)『オテッロ』における”イアーゴ”を思い浮かべてしまいます。

 

加えて今回、得てして省略(カット)されがちなリーザのアリア(独唱曲)も演奏されるということで、通常市販されているCDやDVDでの印象より演技のみならず音楽面でも、随分と強い印象を与えてくれます。

 

 

思えばBELLINIの他の作品でも主役のプリマドンナの傍らに、例えば歌劇『ノルマ』でのアダルジーザや『清教徒』のエンリケッタなど、リーザと同じく”セコンダSeconda”と呼ばれる「第二ソプラノ歌手」を配置するスタイルに合致していて、この作曲家の時代のオペラ様式を理解する上でも典型的な人物とも言えそうです。

 

 

純粋無垢でひたすらに許婚のエルヴィーノへの純愛を口にするアミーナとは対照的に、リーザは聡明で利発で、生身の人間が持つ嫉妬心や野心も覗かせます。ちょっとうだつの上がらない体(てい)ですり寄るアレッスィオには満足せず、伯爵に口説かれてはホロっとし、元彼エルヴィーノからヨリを戻そうと言われれば飛び上がるように喜ぶリーザは、自分の心に正直であるという点においてとても魅力的に描かれています(演出の岩田さんがそう描いてる、とも言えるでしょうか)。

 

 

オペラの幕が開いて前奏曲が流れると、導入の合唱に続いてまず最初に全登場人物の先陣を切ってアリアを歌うのが他でもないこのリーザです。写真の納富さんのままにかわいらしくも美しく、そして芯の強さも備えたリーザを是非お見逃しなく!!

 

 

(※毎回、登場される全ての方のお名前は本公演チラシのつづりのまま、ただしデニス・ビシュニャさんを除く日本人キャストの皆様は苗字と名前を入れ替えて表記・ご紹介致します。)